『Ank: a mirroring ape』佐藤 究

前半は最高傑作で、後半はグダグダのB級ホラー

つい最近、溝口優司著の『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』を読んだばかりだったので人類の進化過程には大いに興味があり、人とチンパンジーは何が違うのか?みたいな物語の始まりには大いに興奮した。

これはフィクションなので科学的じゃなくとも良いのだけれども、科学的にさもありえそうだと思わせる手法が素晴らしかった。人類の進化過程や我々、ホモ・サピエンス以外の人類たちはどうして絶滅してしまったのだろうか?と言う壮大なスケールの謎が解明される!そう思わせてくれた。

この小説は間違いなく傑作だ!と思いながら前半を読み進めた。

ここからネタバレ

ここからネタバレしているのでまだ読んでいない人は気をつけてほしい。この本は、前半から中盤にかけて最高傑作レベルで面白かった。しかし、中盤以降、急にクソつまんなくなる。

散々期待させて謎が酷い。

大体、水面に映った自分を攻撃して溺れ死んだボスザルをみて群がパニックに陥ってお互いに殺しあうとかありえないでしょ。チンパンジーとか類人猿をバカにしすぎ・・・どう考えても、そんなにバカな動物はいない。

この辺でもうミラーリングエイプってそう言うこと?みたいなショックを受ける。更に言わせてもらえばもっともらしくDNAの配列が〜とか言ってたのに蓋を開けてみれば訓練でDNAの配列が変わるとか叫び声を聞いてDNAの配列が変わるとか変わらないとか???

もう、何言ってるのかよくわからない。そんなことでどう考えてもDNAの配列が変わるわけがない。もうめちゃくちゃ。

途中から出てくるパルクールの話も全部、要らないんじゃないかと思われる。そもそもパルクール出来たからと言って猿みたいに木の上を走ったり出来るわけがないし、街中とはいえ、チンパンジーと競争なんて出来るわけがない。マジでチンパンジーを舐めすぎ。

あと、素手でチンパンジーを捕まえるとか取り押さえるとかマジで無理だから。大人のチンパンジーの握力は300kgくらいある。どう考えても人間が取り押さえられるような相手ではない。チンパンジーは素手で車のフロントガラスを打ち破り、中から人間を引きずり出して殺すくらいヤバい奴らなのだ。

物語の核となるチンパンジーの叫びでみんなが殺しあうって言う設定も無理がありすぎ、もうちょっとそれっぽい理由を書いてくれれば物語に入り込めたんだけど、水面に映った自分と殺しあうって言う太古の記憶が呼び戻されるとか言う意味のわからない設定だと『はぁ?』ってなってしまう。

後半はよく、最後まで読めたな?って思うくらいに酷い出来だった。とは言え、前半が最高に面白かったからこそ、ここまで後半に文句が言いたくなると言うもので、この作者は間違いなく才能に溢れている。だって、前半、あれだけ面白そうに書けるのだもの。

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