読書

アップルを創った怪物 スティーブ・ウォズニアック

Appleをたった一人で作り上げた天才スティーブ・ウォズニアックの自伝『I Woz』

彼は超がつくほどの天才で当時、Apple2にフロッピーディスクを付けろと言われ、初めて見るフロッピーディスクの実物を解体してわずか2週間で、当時、世界最速のフロッピーディスクドライブを作り上げてしまった。

そして、ジョブズと違ってかなりのお人好し。

Appleが上場する際、ガレージで生産していた頃から手伝っていた人々がストックオプションを貰えず、上場する時になんのメリットも受けられない事をジョブズに訴えていたがジョブズは全く聞く耳を持たなかった。

そこで、ウォズニアックは自分の株を譲りまくって彼らの為に家を買えるくらいの持ち株を振舞ってしまった。徹底的に持ち株をただの社員に配ろうとしなかったジョブズと対照的。

俺はかなりスティーブ・ジョブズの事が好きだけど、ガレージの頃から一緒にやっていた仲間、しかも友達になんの還元もしないなんてマジでクズだなと思う。マジで友達に選びたいのは絶対にウォズ。

アップルを創ったのは間違いなくスティーブ・ウォズニアック。彼こそ、超天才エンジニアであの時代を切り開いたのは彼の功績。ただ、あまりにもお人好しだし、ジョブズと巡り会わなければアップルは確実に創れなかっただろうと思う。

ウォズニアックは常に世界初の物を発明し、人々を幸せにする為に革新的な物を作り続けていた。人柄も考え方もずば抜けて天才でお金などに全く執着がないのだが、なるほど、これだけ自分の欲しいものを自分で作れてしまう天才なのでお金など必要じゃないなと考えさせられた。

金色機械 恒川光太郎

恒川光太郎の小説の中で一番面白いと思うのは前回紹介した『スタープレイヤー』だ。でも、クオリティが一番高いと思ったのはこの『金色機械』って小説。

江戸時代の時代劇なんだけれどもいつの間にかSF?
設定がとにかく秀逸で、謎の金色の機械、金色様を巡って様々な登場人物の思惑が交差する。

親に殺されそうになり山賊に拾われた嘘が見える少年、触れるだけで命を奪う手を持つ少女、など、様々な登場人物の人生が交差する。これがまた、絶妙な感じで善と悪が入り乱れ、善悪とは何か?みたいな深いところまで考えさせられるような傑作。

この小説は様々な登場人物にフォーカスをあてた短編を見事に絡み合わせて一つの物語として作り上げている。短編小説を沢山の書いている恒川光太郎氏らしい最高傑作の一つ。

めちゃくちゃ面白かった!

ただ一つだけ残念な事と言えば、どうしても金色の機械と言われるとC-3POを思い浮かべてしまう。だってそうでしょ?金色の機械だよ・・・

『夜行』森見 登美彦

十年前に鞍馬の火祭りを訪れ突然姿を消した友達の長谷川さん。十年ぶりに鞍馬に集まった学生時代の友達6人。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。

青春 x 会談 x ファンタジーらしい。

この本、かなり面白そうで期待しちゃったのだけれども、いや、実際に途中まではかなり面白かったのだけれども、どの話もそれでどうなったの?って言う半端な終わり方ばかりでストレスが溜まってしまった。

正直、全然、意味がわからなかった。
こう言うのがいいって人は結構いるのだろうけれども、俺的には何もはっきりせず、最後にパーッと伏線を回収してくれるのかな?と期待したのだが謎は全て投げっぱなし。

なんだこりゃ?
なんとなく余韻とか良さそうな雰囲気だけ出しているけれども、どうもこう言う本は苦手だ。

かなり人気の作家だが俺には合わなかった。
きっとこの人の本はもう読まない。

スタープレイヤー

著者:恒川光太郎

近年読んだ小説の中で一番面白かった小説。この本を機に恒川光太郎さんの小説を片っ端から全部読むことになってしまった。

恒川光太郎さんは何処と無く伊坂幸太郎風の作品で、主に短編小説が多い。その中にある長編小説はどれも外しがなく、超おすすめ。

スタープレイヤーはある日、スタープレイヤーに当選しましたとか言われて異世界に転生してしまう、スタープレイヤーとは好きな願い事を10個なんでも叶得られる選ばれし者でその世界には数人しかいないというお話。

最近、異世界転生モノのライトノベルなんかが流行っているけれども恒川光太郎さんが異世界転生モノを書くとこうなるんだ!ってワクワクしてしまう。

設定がすごく好きで、もし、自分だったらどんな願いを叶えるのかな?なんて考えながら読んでめちゃくちゃワクワクしてしまった。だってドラゴンボール10回分だからね、いや、実のところ、ドラゴンボールよりも制約が少なくて沢山の条件を一気にお願いすれば一回の願いで出来てしまう。

実はこれ、続編の『ヘブンメイカー スタープレイヤー』と言うのがあって、これがまた面白い。俺はこの本で一気に恒川光太郎さんの大ファンになってしまった。

後、金色機械って長編もおすすめ。むしろ、小説としてのクオリティは金色機械の方が高いかもしれない。ただ、やっぱりワクワクして楽しいのはスタープレイヤーだ。

その女アレックス

著者: ピエール・ルメートル

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。

これ、物語が3章立てになっていて展開がマジで読めないんだよね、何?どうなっているの?ってどんどんひっくり返されちゃって。普段、ミステリーとか読んでいる人にはぜひ読んでもらいたい。

正直、ストーリー構成とかかなりよくできていると思う。登場人物もややマンガ的にコミカルにデフォルメされた感はあるけれどもしっかり一人一人のキャラが立っていてちょいとハードボイルド風の刑事ドラマな展開が楽しめる。

ただ、この物語の良いところでもあるんだけれどもストーリーが二転、三転してどこに向かって進んでいるのかがさっぱりわからず中盤はあまりストーリーに入り込めなかった。決してこの小説が悪いわけじゃ無いのだけれども、個人的には中弛みしてしまったのが残念。

『Ank: a mirroring ape』佐藤 究

前半は最高傑作で、後半はグダグダのB級ホラー

つい最近、溝口優司著の『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』を読んだばかりだったので人類の進化過程には大いに興味があり、人とチンパンジーは何が違うのか?みたいな物語の始まりには大いに興奮した。

これはフィクションなので科学的じゃなくとも良いのだけれども、科学的にさもありえそうだと思わせる手法が素晴らしかった。人類の進化過程や我々、ホモ・サピエンス以外の人類たちはどうして絶滅してしまったのだろうか?と言う壮大なスケールの謎が解明される!そう思わせてくれた。

この小説は間違いなく傑作だ!と思いながら前半を読み進めた。

ここからネタバレ

ここからネタバレしているのでまだ読んでいない人は気をつけてほしい。この本は、前半から中盤にかけて最高傑作レベルで面白かった。しかし、中盤以降、急にクソつまんなくなる。

散々期待させて謎が酷い。

大体、水面に映った自分を攻撃して溺れ死んだボスザルをみて群がパニックに陥ってお互いに殺しあうとかありえないでしょ。チンパンジーとか類人猿をバカにしすぎ・・・どう考えても、そんなにバカな動物はいない。

この辺でもうミラーリングエイプってそう言うこと?みたいなショックを受ける。更に言わせてもらえばもっともらしくDNAの配列が〜とか言ってたのに蓋を開けてみれば訓練でDNAの配列が変わるとか叫び声を聞いてDNAの配列が変わるとか変わらないとか???

もう、何言ってるのかよくわからない。そんなことでどう考えてもDNAの配列が変わるわけがない。もうめちゃくちゃ。

途中から出てくるパルクールの話も全部、要らないんじゃないかと思われる。そもそもパルクール出来たからと言って猿みたいに木の上を走ったり出来るわけがないし、街中とはいえ、チンパンジーと競争なんて出来るわけがない。マジでチンパンジーを舐めすぎ。

あと、素手でチンパンジーを捕まえるとか取り押さえるとかマジで無理だから。大人のチンパンジーの握力は300kgくらいある。どう考えても人間が取り押さえられるような相手ではない。チンパンジーは素手で車のフロントガラスを打ち破り、中から人間を引きずり出して殺すくらいヤバい奴らなのだ。

物語の核となるチンパンジーの叫びでみんなが殺しあうって言う設定も無理がありすぎ、もうちょっとそれっぽい理由を書いてくれれば物語に入り込めたんだけど、水面に映った自分と殺しあうって言う太古の記憶が呼び戻されるとか言う意味のわからない設定だと『はぁ?』ってなってしまう。

後半はよく、最後まで読めたな?って思うくらいに酷い出来だった。とは言え、前半が最高に面白かったからこそ、ここまで後半に文句が言いたくなると言うもので、この作者は間違いなく才能に溢れている。だって、前半、あれだけ面白そうに書けるのだもの。

太陽の簒奪者

太陽の簒奪者

野尻 抱介著のSF小説
簡単に言うと宇宙人とのファーストコンタクト物のSF小説。

西暦2006年に突然、水星から噴き上げられた鉱物資源が太陽をとりまく巨大なリングを作り始める。高校生の時にそれを観測していた主人公の白石亜紀は、後に科学者となり・・・

これ、結構長い時間かけて進む小説で、年代がどんどん進んでいくのだけれども、そのせいか登場人物たちにイマイチ、感情移入しきれなくて、なんだか淡々と物語が進んでいってしまった。謎がちょっとづつ解明していくストーリー構成とかも面白いし、王道の宇宙人とのファーストコンタクト物にしては少し変化球で攻めているのでありがちな感じの小説にならず、独自の展開をしていく。

宇宙人との遭遇と言えば、基本的に友好的か敵対的かに別れると思うけれども、なぜそうなるのか?この小説ではその辺の哲学的なところを表現したかったのかなと思う。変に安い感動のシーンとかを入れなかったのは潔いと思うが全体的にはやや淡白なストーリー。それが良さでもあるのだろうけれど。

決してつまらない訳ではないのだけれども、俺は、どうも物語に乗り切れなかった。
どうも相性が悪かったらしい。